国際的アニメーション《アンパンマン》の作者として知られる #やなせたかし が、漫画家として独立した最初に手掛けた幻の漫画集。
やなせ氏は、1947年（昭和22年）東京に上京、三越百貨店の宣伝部にグラフィックデザイナーとして入社。又この頃、「独立漫画派」「漫画集団」など若手漫画家グループにも参加し、兼業で漫画を描くようになる。
三越宣伝部での仕事として、包装紙「華ひらく」のデザインプロジェクトに関わり、そこでは洋画家猪熊弦一郎のデザインに「mitsukoshi」の筆記体のレタリングを担当。これは後年まで三越の象徴として使い続けれる長寿デザインとなる。
1953年（昭和28年）やなせ氏は34歳、漫画や広告の仕事が増え、三越の給料を超える収入が見込めるようになり退職した5年後の作品。
✳︎書名：ビールの王さま
✳︎著者・発行人：やなせ たかし
✳︎発行日：昭和33年8月1日（1958年）
✳︎発行所：私家版
✳︎印刷所：（株）ライトパブリシティ
✳︎判型：約9㎝×27㎝
✳︎状態
カバーに経年によるスレ・表紙に傷みがありますが、本文は概ね良好。研究・鑑賞には問題ありません。
◉作品概要
現サッポロビール（当時ニッポンビール）の広告漫画として制作された4コマ作品を28話を収録。言葉を使わず絵だけで完結させる「パントマイム漫画」という独自手法で描かれ、当時の漫画の主流から外れ、極めて限られた流通経路で制作・刊行されたため、現存する部数はごく僅かです。どれもビールの楽しさを表現しつつ文学性と娯楽を兼ね備え異彩を放つ本作は、後のアンパンマンの誕生につながるやなせ氏のユーモア精神と創作の原点が表れています。
◉特筆点
本書は直筆サイン入りで「馬場辰雄様」宛。当時のやなせ氏との交流を示す歴史資料価値が高い一冊です。
◉馬場辰雄（1925年 - 2011年）
戦前から郵便局員として働きながら漫画家を目指し、1949年に「週刊朝日」新人漫画コンクール「春が来た来た」で入選。以降、物資不足と貧国にあえぐ戦後日本において「生活漫画」を描き続けた漫画家です。
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